『月と六ペンス』 モーム(著)、土屋政雄(訳) -光文社-

非常に面白かった。
この「月と六ペンス」は、画家、ポール・ゴーギャンをモデルとしている。
始まりは、だらだらとした雰囲気で、「外したか...」と思わせたが、すぐにのめり込んだ。
平穏な生活、家族を突然捨て、「絵を描くことにした」ストリックランド。
ストリックランド婦人を通して、ストリックランドに関わる事となった「私」。
「私」と「ストリックランド」の距離感が好ましく、これを保ち続けているのが良かった。
自分の「美」を追求するストリックランド。
その、ストリックランドの凄まじさ。
自分の追及する「美」以外は、自己の存在も含め、その価値を一切認めない。
価値の認められないものは全て、自己からも切り捨てていく。
自己の創作活動として「作品」から美しく無いもの、無関係な部分を切り捨てていく事は出来ても、その「切り捨て」を自分の人生にまで及ぼす事は難しい。
しかしそれを完成させれば、人生そのものが一つの「作品」となる。
そのためには、描き終えた後も作品の上に絵の具を滴らせ続ける筆を、どのように置くかが問われる。
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